アダルトチルドレンの症状に悩まされている方の場合、人間関係がうまくいかない・行動ができない・不安感・自殺願望・リストカット・自意識過剰なのに注目されるのが嫌・・などの生きづらさに悩まされてしまったり、他人との違和感に直面することが多いといわれております。
本当に辛くてどうしようもないほどの生きづらさの原因となっているのは、「親による非言葉によって発せられるメッセージ」による人生への影響であり「禁止令」といわれております。
ACの方の多くは、禁止令によって苦しめられているといっても過言ではなく、禁止令を発見していくことは生きづらさも克服していくことにもなります。
- 1 禁止令とは
- 2 12個の禁止令
- 2.1 1.存在するな(Don’t exit)
- 2.2 2.男(女)であるな(Don’t be the sex you are)
- 2.3 3.子どもであるな(Don’t be child)
- 2.4 4.成長するな(Don’t grow)
- 2.5 5.成功するな(Don’t succeed)
- 2.6 6.何々するな(Don’t do that)
- 2.7 7.重要であるな(Don’t be important)
- 2.8 8.所属するな(Don’t belong)
- 2.9 9.愛するな・信用するな(近づくな)(Don’t love. Don’t trust)
- 2.10 10.健康であるな(Don’t be well)
- 2.11 11.考えるな(Don’t think)
- 2.12 12.感じるな(Don’t feel)
- 3 自分の中にある禁止令を変えていくには?
- 4 まとめ
禁止令とは
禁止令とは、心理学の交流分析の一つの心理学であり、1950年代にエリック・バーンという精神科医によって提唱され、グールディング夫妻(1979)によって以下の12のリストにより説明されるようになりました。
〈存在するな(Don’t exit)〉、〈男(女)であるな(Don’t be the sex you are)〉、〈子どもであるな(Don’t be child)〉、〈成長するな(Don’t grow)〉、〈成功するな(Don’t succeed)〉、〈何々するな(Don’t do that)〉、〈重要であるな(Don’t be important)〉、〈所属するな(Don’t belong)〉、〈愛するな・信用するな(近づくな)(Don’t love. Don’t trust)〉、〈健康であるな(Don’t be well)〉、〈考えるな(Don’t think)〉、〈感じるな(Don’t feel)〉の禁止令の12のリストが有名です。
上記の禁止令は一見大きな問題には感じられないかもしれませんが、大人になってからの生きづらさと深く関係しています。
禁止令は、「親による非言葉によって発せられるメッセージ」によって子どもに届けられてしまい、アダルトチルドレンの方を無意識に苦しめている要因の一部になっています。(「拮抗禁止令」ももちろん関与しております。)
ACの方がメンタルブロックに雁字搦めになっているのは、この禁止令が大きく関与しているので、メンタルブロックを解除するためにも是非理解しましょう。
では、「禁止令」を説明する前に、人生脚本についてお話します。
人生脚本について
人生早期に親の影響を受けて発達していく、思考・行動・人生のことを人生脚本と呼ばれているんですね。
E・バーンは、「人生脚本とは、人生早期に親の影響で発達し、現在も進行中のプログラムをいい、個人の人生の最も重要な場面でどう行動するかを指図するものである」といっています。
ギャンブルで多大な借金をして身を持ち崩してしまう人、子どもに自分がされたように虐待をしてしまう親、更生しようとしても何度も犯罪をおかしてしまう人など、ダメだとわかっていても同じような行動を何度も繰り返してしまうような人がいます。E・バーンは、このような人の行動が、配役、せりふ、演技、背景、物語の盛り上がり、結末まで備わっており、まるで映画やドラマのように劇的に進行してゆく様をみて「人生脚本」と名付けました。
↑まさに毒親の人生脚本の例です。ダメだと思っていても同じことを繰り返してしまい、脚本のような人生に仕上がっていますよね。
虐待は連鎖すると言われてしまうのも、毒親の影響を受けた人生脚本になってしまう場合があるからと言われています。
↓人生脚本とは、以下の図の「拮抗禁止令」「プログラム」「禁止令」の3つが影響し合って作られていくと言われております。
もし、人生脚本が自分に合致していたら、そこまで深刻な生きづらさや二次障害を抱えないでそのプログラム通りになっていきます。
脚本の図式(クロードスタイナーの脚本母型)
では、人生脚本にも多大なる影響を及ぼしている、禁止令について説明します。
アダルトチルドレンの生きづらさであり、人間関係の悩み、他人との大きな違和感・・・・なども禁止令と言われています。
12個の禁止令
以下は、グールディング夫妻(1979)の代表的な12個の禁止令です。
実は、禁止令は他にも多数あり、人によってはあなたにしかない禁止令があるので一概にもこれしかないというのはありません。
12個の禁止令
- 存在するな(Don’t exit)
- 男(女)であるな(Don’t be the sex you are)
- 子どもであるな(Don’t be child)
- 成長するな(Don’t grow)
- 成功するな(Don’t succeed)
- 何々するな(Don’t do that)
- 重要であるな(Don’t be important)
- 所属するな(Don’t belong)
- 愛するな・信用するな(近づくな)(Don’t love. Don’t trust)
- 健康であるな(Don’t be well)
- 考えるな(Don’t think)
- 感じるな(Don’t feel)
1.存在するな(Don’t exit)
幼い頃に両親から虐待を受けていたり、「お前は生まれてこなくてよかった子供だ」と言われてた子供はこの禁止令が必ずあります。
また、両親からの愛情を受けることが出来なかった家庭環境だったり、親が原因なのに子供のせいにさせられてしまっていると、
「自分は生きてはいけない存在」「目立っていてはいけない」「影を潜めて生きていかないといけない」
と思ってしまい、自分の存在や自分の命を大切にすることが出来ません。自殺衝動・リストカット・薬物依存・虐待連鎖になってしまっている人などに、この禁止令が影響している可能性があります。
2.男(女)であるな(Don’t be the sex you are)
男の子(女の子)を望んでいた親から与えられてしまうことがあります。
ですが、性別は自分ではどうやっても変えることができません。この禁止令があると、自分の性や自分自身に自信が持てなくなり、周りの評価や世間体に左右されやすくなります。
また、性同一性の迷いに関連したり、男らしい女もしくは女らしい男など、両親の望むような性別の振る舞いをすることもあります。
3.子どもであるな(Don’t be child)
親の愚痴・悪口・悩み等を聞くカウンセラー代わりになったり、本来親が兄妹を育てないといけないのに子供が自分の弟、妹の面倒を見るよう言われている人、あまりにも厳格で童心を許さない家庭などが与えやすいメッセージと考えられます。
このような子供らしさを持つことを許さない親に育っていると、「子供であるな」というメッセージが入ってしまっています。
わがままであることや自分の感情を優先することを回避し、他者の感情を優先させようとします。
子ども時代を子どもらしく生きることができないと、大人になった時もいつも我慢ばかりしてして自分を大切にできなかったり、他者を優先させてしまうことがあります。他人の世話焼きに夢中になったり、付き合う男性がいつもダメンズばかりなどといったことが思い当たるのであればそれは、「子どもであるな」の禁止令が無意識に組み込まれている可能性があります。
そして、「子供であるな」の禁止令が入っているケースで多いのは、親自身が子どものときに、子どもをしていなかったから、自分の息子・娘たちに無意識に子どもをさせてないように教育をしてしまいます。
4.成長するな(Don’t grow)
過保護な親から溺愛されたり、祖父母に猫かわいがりされた場合にこの、禁止令が書き込まれる可能性があります。
成長するなは、「子供であるな」の真逆になっていて、すべての事に対して、親が干渉をしてきたり、制限をかけることで過保護に育てられるケースが多いです。
親自身が、子供に対して、適切な自立や子離れを出来ていないと、
子どもの心の中には、「僕は無理して成長しなくてもいい」「成長しない方が可愛がられる」と無意識に思ってしまいます。
また、いつまでもその親に対する子どもでいて、親を喜ばす(=わずらわす)ほうがいいのだと思い定めることがあるのです。
子どもは自立することができなくなり、親子でお互い依存的な関係になっているケースが多いです。
また、成長して大人になったときに、一人では何もできない、決められない人間になってしまいます。
5.成功するな(Don’t succeed)
何をしても、 何度も失敗してしまうようなパターンに陥っている人は「成功するな」という禁止令が入っている可能性があります。
1.上手くいったときは褒めてもらえないけれど、失敗したときは慰められる、励まされる
成功したり、上手くいったときは褒めてもらえないけれど、失敗したときは優しくされるので成功してはいけないと無意識に思うようになります。
2.失敗を責めることによる、「お前は何をやっても無駄だ」「失敗する」
①とは逆に、失敗すると責めたてられ、「何をやっても無駄・どうせ失敗するに決まっている」などと言われるために、子ども自身も何をやっても失敗すると思い込み成功できなくなります。自分は成功できない人間だと思い込んでしまうこともあります。
3.成功に一切の関心を示さず、失敗したときに批判する
成功に関心を示さず、失敗したときに批判することにより、勝手に成功してはいけないと思い込むようになってしまいます。成功するには親の許可が必要と思い込むのです。
4.子どもが成功する姿に嫉妬してしまう。
親自身が成功体験が少ない場合、子どもが成功したことに対して嫉妬してしまうことがあります。そのため、子どもは「成功してはいけない」と思い込むようになります。
そして、子ども自身が成功する一歩手前ですべてを投げ出したり、仕事が成功・達成するのにも関わらず手を引いてしまったり、自分の手柄にしない人にはこの「成功するな」というのが心の中にあります。
子どもの心の中には、「自分は成功できない人間なんだ・成功してはいけない人間なんだ」と思ってしまっているからなのです。
何をしても、何度も失敗するようになったり、成功する手前で手を引いたりして結局成功することができません。
6.何々するな(Don’t do that)
子どもが何かひどい目に合うと思い込んでいる親の恐怖心によって与えられてしまいます。
「いじってはダメよ。あなたは必ず壊すのだから。」「木のぼりをしてはいけない」「ローラースケートはだめよ」「あれも、これも危ない。」といって、親の恐怖心によって、子供の行動を制限をするケースが多いです。
子供が持っている好奇心や遊び心に対して、「危険だ。」と親が思ってしまい、子供がやりたいことや言い出したこと全てに対し心配して制限をかけてしまっています。
すると、子供は、「自分がすること、正しいこと、安全なことは、一つも無い」と思ってしまって、
指示してくれる人を好む、自分で考えて行動することに躊躇したり、自発的な行動や自分がこれをしたいといったことが少ないのです。
7.重要であるな(Don’t be important)
子どもに対して拒否的な衝動や子どもを軽視する親からのメッセージによって、子どもは自分を軽視して目立たないように生きようとします。
そのため子どもは一番になってはいけないと思い込むようになり、注目を浴びるのも嫌うようになる、大人になってからはリーダー的なポジションでは力を発揮できなくなります。
例えば、子供がテストでいい点を取った時や先生に褒められたとき、子供は親に対して、
- 「今日こういう事があったんだ!」
- 「今回のテストで85点も取れたよ!」
と子供は、親に話すと思います。
ですが、この時に親が「あっ、そうなんだ」と親の反応が冷たいと、子どもは認めてもらえないこと・褒めてもらえないことにショックを受けます。
それが重なっていくと、「自分は一番(重要)であってはいけない」と思い、「一番であるな・重要であるな」という禁止令が入ってしまいます。
この禁止令を持つ人は、常に目立たないように心がけ、陰日向で活躍する人であることが多いです。
また、部下やチームメイトとしては優秀だったのに、リーダーやキャプテンになった途端に実力が発揮できなくなる人はいないだろうか。まさにそういう人は、この禁止令が入っています。
人の上に立つ立場になると、「重要な人になってはいけない」と自分に禁止令をかけてしまうので、自分が本来持っている力を思うように、発揮することが出来ません。
また、私は表舞台にたつよりも、裏方のほうがいいという人にも、この禁止令が入っていると思います。
上記のように、やってもやっても親が認めてくれなかったり、能力や金銭面(親の資金力)でかなわないと思うと、自分のレベルはこのくらい…とあきらめていくことで、それに見合った人生のストーリーを作ってしまう場合もあります。
重要に扱われることに(役割・昇進など)に居心地の悪さを感じたり、ここぞという場面で実力を発揮できないというのも、そういった重要な人になってはいけないという思い込みによるものです。
8.所属するな(Don’t belong)
あなたは他の子と違って扱いずらいというメッセージや、家庭内不仲、虐待等により親と親密な関係がないことが影響して、大人になってからも親密な関係を避ける傾向になります。
親と仲良くすることができない、属する家庭が危険だと子どもが判断した場合、成長後出会うあらゆる集団、学校や職場・社会にも危険を感じ、所属することが苦しく、人づきあいが疎遠になったり、人と仲良くできなくなったりします。
安全な居場所を探すことにエネルギーを使い果たしてしまったり、会社等に属することでそこに役立つことや貢献することを考える自己実現的なことはできなくなってしまうのです。
9.愛するな・信用するな(近づくな)(Don’t love. Don’t trust)
決定的な愛情不足や忙しいなどで、子どもとのスキンシップやかまうことをしない親から与えられてしまう禁止令です。
親にかまってもらいたくて近づいたときに、「あっちに行ってなさい」「疲れているからあとでね。」「危ないから離れていて」といった言葉でも、何度も繰り返すうちに「近づくことを拒否されている」と受け取り、人に近づかないと決断することもあります。
こういったことが日常化すると、人に近づくことや一緒に何かをすることに安心安全を感じることができず、コミュニケーションがうまく取れなくなってしまう可能性があります。
大人になると、余計に一人で抱えるようになるので、人に甘えることや相談することもできなかったり、他人も信じられなくなっていきます。
しかしながら、この禁止令を持つ人は、人を信じられないだけでなく、信じていい人といけない人の区別がつかなくて騙されやすい傾向もあります。
10.健康であるな(Don’t be well)
病気の子は世話するが、健康な子どもは世話しないといった親から受け取ってしまう禁止令になります。
子どもは「病気になればかわいがってもらえる」という思いから「不健康になろう」と決心してしまいます。
この禁止令を持つ人は大人になってからも具合が悪いことで人から注目されたり、かまってもらったりしようとします。
親から日常生活の中で愛をもらっていない人が、病気になることで、自分が親に注目され、本当は違う形で欲しかった愛を貰うために、自分がいつも病気になっていないといけないと無意識の中で決断しているのです。
11.考えるな(Don’t think)
子供のころに過干渉で操作的な親から与えてしまう、無駄なことはしないほうがいいと思い、問題対処の際に考えることを苦痛になってしまいます。
また、場合によっては問題がおこるとおろおろするなど、混乱しやすく頼りない親を見て、子どもは「難しいことは考えまい」と思うのです。
子どもの考えていることを馬鹿にしたりすることでも考えない方がいい・判断しないほうがいいと決断してしまう場合もあります。
子どもの考えることは的外れだったりまちがっていたり夢みたいなことだったりすることもあります。それを笑ったり否定したりバカにしたりすると、子どもは自分が考えることはおかしい・まちがっていると思い込んでしまうためです。
大人になると、消極的で優柔不断な人になってしまったり、問題対処の際におろおろしたり考えることができない人間になってしまいます。
12.感じるな(Don’t feel)
「泣く子は嫌い」など、悲しみや怒り、喜びなどの感情を禁じる禁止令です。感情レベル・心が通い合ったコミュニケーションをしない親から伝えられることが多いでしょう。
共感してくれない・自分勝手で話が通じない親や子どもの感情表現を禁止する親の多くは、
子どもが、辛いことや嫌なことがあって泣いた時や、遊んでほしい・かまってほしい・甘えたいなど子どもが感じたことを求めて来た時に応じてくれません。
子どもは受け入れてもらえないことに苦痛を感じ「感情を感じない方がいい」と決断する可能性もあります。
感情にふたをし続けたまま大人になると、過食や大量の飲酒、薬物などの強い感覚を得ることで生きているという感覚を味わおうとするようになることがあります。
摂食障害や中毒症と言われる状態になる人もいます。それ以外の時は感情がないのではなく「無感覚」という感情を作り出すのです。
人生を豊かにする喜びや達成感を感じることが少なく、幸せを感じて生きることが難しく、心身症に陥る可能性があります。
自分の中にある禁止令を変えていくには?
12個の禁止令を読んでみて、多く当てはまっているからといっても落ち込む必要は全くありません。ちなみに以前の私自身はほぼすべてに当てはまっていたほどです。
この禁止令を発見した当初は、落ち込んだり親に対しての嫌な感情が湧いてくるかと思われますが、自分を変えていく良いきっかけにしましょう。
この禁止令を見つけたが、禁止令から解放され、生きづらさが無くなっていく第一歩なのです。
そして、この禁止令を見つけてからは、またさらに自分自身をアップデートしていくきっかけにもなります。
自分の禁止令を見つけることができると、今までの苦しみや分からなかったこともいろいろと理解できるようになり、メンタルブロックもなくなっていきます。
見つけること・気付けることが大切です。
まとめ
私たちが育った家庭環境の中で、無意識の中で、自分自身に課してしまっている禁止令にはたくさんあると思われます。
何か引っかかったり、抵抗を感じる、または否定したくなるようなものがあれば、それはあなたが課してしまっている禁止令でもあり、親からの禁止令です。
禁止令は、他人との根本的な違和感を生じさせたり、様々なメンタルブロックに悩まされてしまったり、生きづらさ、二次障害などにまで及ぼしているのです。
まずは、禁止令を見つけて自分の中で少しずつ修正していき、自分自身もアップロードしていってください。
カウンセリングでも是非ご相談ください。
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